中庭が見える廊下を懐かしみながら歩いて、望月の大きな背中を追って、通されたたのは大広間。


あ、この部屋、年末に宴会をしていた場所だ。


襖が開くと、両脇に等間隔に座り、一様にこちらに目を向ける荒瀬の屈強な男たち。




見渡すと、探している人はすぐ見つかった。


部屋の最奥、上座にあぐらをかいて座る、帝王。


今日も全身を黒に包んだ彼は、その漆黒の瞳を、ゆっくりと私に向ける。


ひとつひとつの仕草が艶っぽくて、何もかも美しい。


……志勇。


心の中で彼を呼んだとき、目が合った。



鼓動が高鳴る。全身が痺れる。


わたしたちはお互い一言も発さず、ずっと、ずっと見つめあっていた。



やがて襖は閉められて、覇王が帝王を謁見(えっけん)するために歩みを進める。


じろり、じろりとたくさんの目がわたしをねめつけるも、わたしは背筋を伸ばして歩いた。


その間も志勇と目で会話をしていた。



「壱華、座り」



ところがあと少しのところで立ち止まり、耳打ちしてくる望月。


ところが、その時だった。





「……おい」