SIDE 志勇



連日、報道番組に流れる、極山と警察の空前絶後の事件。


極山は、束ねていた若頭が拘束されたことで失速し、交戦不能と白旗を掲げ、抗争は呆気なく終結した。


西雲には前々から、全て終わらせたら壱華を返すと言付けてあったので、抗争の事後処理に追われていたある日。




「兄貴、兄貴!これ、どうしよう!」



颯馬がドタバタとでかい足音を立てて部屋に乱入してきた。


手には荒瀬志勇殿、と筆で達筆で書かれた手紙が握りしめられている。


差出人はおそらく……望月だな。




「どうしようも何も、開けて見なきゃ分かんねえだろ」



バリッ、颯馬の手から奪い取ってその封を破いた。



「あっ!もっと慎重に開けろよ。手紙開ける前のドキドキとかねえの?相変わらずの怖いもの知らずだな!」

「知るか」



カサカサと折りたたまれた紙を開いて読む。


1枚目は、俺を撃った上に潮崎のガキを人質にしたことを許してほしいだの、情報入手のために梟を貸してくれたことを感謝するなど、当り障りのない文章が並ぶ。


しかし二枚目には、俺の望んでいた言葉が。









『宿願は果たしました。
後日、あなたの大切なものを返しに伺います』










心にぽっかり開いた穴が、目に見えないぬくもりで満たされていくようだった。


ということは、あいつはこれを書いた時点で、壱華は返せる状態にあったというだな。


考察すると、怒りとともに笑いがこみ上げてきた。



「ふん。このご時世に、アナログな回りくどいことしやがって……さっさと返せよバーカ」