相川実莉。


あの女が黒帝に近づいてきたのは、かれこれ2ヶ月ほど前。



『あの、光冴くんって……いますか?』



甘い声、謙虚で大人しい性格に、華奢で愛らしい外見。


俺たちはまんまと騙された。


全てが奴の演技であり、あいつら姉妹の計画だとは露知らず。





『助けて、光冴くん。あいつらに全部奪われちゃう……。
わたし、居場所がないの。わたしはみんなと血が繋がってないから、家族にいじめられるの。
特に2番目のあいつが……壱華が怖い。いつか殺されちゃう、どうしよう』



ある日、実莉は涙を流しながら自分の生い立ちを語ってきた。


壱華に男を使ってレイプされた。


最近では俺と付き合っていることを知り、別れなければその時の写真をばらまく、と脅されているという話を聞き信じた俺はそれを理叶に伝えた。


実際、中学の頃の壱華を調べると、出てくるのは悪い噂ばかり。


壱華を知っている者は口をそろえて、あいつは悪女だと語った。


それを理叶に報告すると、最初はあり得ないと否定していたが次第に俺の話を信じ、俺はすぐさま壱華を攫って黒帝の倉庫で暴行を加えた。


俺たちが問い詰めると壱華は反論もせず黙ってしまったから、図星なのだと、その時は思っていた。


それが間違いだったと分かったのは、壱華がいなくなる前日のこと。