荒瀬という言葉に反応し、久々に感情を出した。



「本当に?」

「おう、そんな疑わんでも嘘やないで」

「なんで、急に……」

「それはまだシークレット。これを知ってるのはお前と俺と赤星。それから梟と荒瀬志勇だけ。
ほな、詳しくは後ほど……」



彼は機嫌よさげにあどけない笑みを浮かべて、ゆっくりと腰を浮かせた。


天井につきそうなくらい大きな体で伸びをすると、ふと思いついたようにわたしの顔をのぞきこむ。




「あ、明日ぐらいになるかなぁ。ニュース見てみ。
どえらいことになってると思うで」



そして目を細めて笑う。



「長かったなぁ。やっとここまで来れたわ。やっと、幹奈の敵討ちができる。
それもこれも壱華のおかげや、ほんまありがとう」



感謝を表す彼は決意の目をしていた。きっとこれから何か起こすつもりなんだと悟った。


部屋の外へ出ようと歩み出した彼。すると待っていたかのように、襖がカラカラと開いた。



「……大希、参りましょう」

「ああ……」



現れ出たのは赤星。覇王は威厳を持って彼に並ぶと、最後に振り返った。



「じゃあな壱華。来週には東京に帰れるやろうから、荒瀬の若頭を心配させんよう、俺がおらんでもちゃんと飯は食べとくんやで?」



別れ際に冗談っぽく配慮するのがなんとも彼らしい。


わたしははっきりとうなずいた。






「さて……15年ぶりの、雪辱を果たそうか」






そうして彼は、その眼に強い光を宿し、大きな背中に様々な想いを背負って屋敷を出た。