SIDE 志勇



壱華が攫われ、優に2週間が過ぎた。


乱雑に散らかった本家の離れ。様々な情報機器が無造作に置かれている。


俺は病院を抜け出し、壱華の奪還に一歩でも近づけるよう専念していた。



「長引くね……極山も一筋縄とはいかないか」



抗争がなかなか終結しない中、西雲会に壱華を返すよう梟を通して要求しているが、返答は常に同じだった。



『相川壱華は無事だ。
こちらにも考えがある。もうしばらく待て』




お前たちが俺のものを奪ったというのに、待てとは何様だ。


壱華さえいれば俺は何を捨てていいというのに。


どうしたら、どうしたら壱華を奪い返せる。いったい何をしたら……。



「志勇、顔が真っ青よ。少し休みなさい」



はっと辺りを見回すと、颯馬とおふくろが並んでいた。


いつからそこにいたのかと考えてしまうのは、相当追い込まれている証拠だ。



「西雲から返事は?」

「……相変わらずだ」



状況を報告してきた颯馬と会話を交わしていると、仕事用のスマホに一通のメールが送られてきていた。送り主は、梟。


それは望月から送られてきたメールを俺に送信してきたものだった。


内容はたった一行だけ。




『そろそろ終わりにしようか』




だが、共に送られてきたファイルの中身は、誰もが吃驚するものだった。


状況を(くつがえ)す驚愕の事実の証拠を、奴らはついにそろえたのだ。


全てを終わらせる切り札を手にし、大手をかけたのは苦渋(くじゅう)を強いられ生きてきた西雲というわけか。


この勝負に関しては荒瀬の負けだな。


だが、これでようやく壱華に近づけた。


もう少しの辛抱だ。……死ぬんじゃねえぞ。