SIDE 壱華



「今日も健気やなぁ、壱華」



病院の廊下で、わたしを見下ろして笑う望月。


西に連れ去られてからもう2週間が過ぎようとしていた。


理叶の経過は良好。そろそろ抜糸してもいいらしい。


わたしは毎日のように理叶の世話をした。そうすることでさみしさから逃れているつもりだった。


でもそれはしょせん当てつけで。


理叶を助けているつもりが、苦しい想いを抱かせてしまっていた。


理叶も、わたしが揺らがないと知って告白したんだろう。潤んだ彼の瞳がそれを語っていた。


その出来事が余計に、わたしの中の志勇の存在を大きくした。



「なぁ、壱華」

「なに?」

「あんなん荒瀬志勇が見たら、あいつ殺されるんとちゃうか?」




聞き耳を立てていたのか、望月は愉しそうに白い歯を見せた。


相変わらずな人、と思っていると、肩に感じた手の感触。


目をやると、ちゃっかり肩に手が触れていた。




「そうね……あなたもね」



だからこいつも人のこと言えないと、ギュイっと思いっきり手の甲を抓ってやった。



「痛っ!?ええ~?爪立てて抓らんでもええや~ん」



ぱっと手を放して本気で痛がる彼を横目に、心に影がさすのを感じた。


志勇、あなたは今、どこで何をしているの?


あなたの心の中に、わたしは生きていますか?