「いやぁ、いじめすぎた。すまんすまん、堪忍してや」

「……」

「そんな顔せんといて。赤星の言う通り、真面目な話があるんや」

「真面目な話?」



「昨日、潮崎理叶が目を覚ました」




……え?



「理叶?」

「ん、ああ、そうか。人質に連れてきたって伝えてなかったっけ?」

「理叶は、どこにいるの?」

「病院。傷がひどかったから、大阪から飛ばして待機させてたドクターヘリで府内の病院に運んだんや。
もともと死傷者が出るの承知での奇襲やったからなあ」



要するに、理叶は重傷だったのだろうか。


撃たれる直前、わたしを庇うようにして飛び出した2人の背中が浮かぶ。



「光冴は?」



続けて訊くと、彼は眉をしかめた。



「心配、か?優しいなあ、あいつらはお前を傷つけた張本人やってのに」

「っ……」

「まあ死んだって情報はないから生きてるやろ」

「……またそうやって不安を煽る……。
ご安心ください。彼もまた傷を負っていますが、生きています。
今は都内の病院に入院している模様です」

「そう、なんですね」

「で、どうする。目を覚ましたらしい潮崎に会いにいこか?
赤星が事情を説明したらしいけど、信憑性に欠けるから聞く耳持たんかったらしくてな」



覇王は急に理叶に会わないかと提案をしてきた。



「気晴らしにどうや?この部屋ん中でいつまでも籠の鳥は辛いやろ」



……そういえば、理叶とはあの日以来まともに言葉を交わしていない。


交わすことができなかった。怖かったから。


だけど今はお互いに囚われの身。何をするにも鎖がついてまわっている。


この機会を逃したら話すことはないかもしれないと、わたしは小さくうなずいた。