5日目。



「いつまでこんな茶番を続けるの?」



わたしは単刀直入に問いただした。


今日は朝からずっとこの部屋にいて、パソコンやタブレット機器を利用し、何かを調べている様子の覇王。




「俺はまだ動かへんで。最後の最後にいいとこ取りするんが西雲や」

「……何をするつもり?」

「心配せんでも、荒瀬は、叩こうなんて思っとらんで」



荒瀬は、とアクセントを強調するということは、極山には容赦しないという意味合いだろう。


彼らが荒瀬組に手を出さないという保証もないけど。



「勝敗は元々目に見えてる。荒瀬に敵う組織は日本にはおらん。
極山やて壱華が手元にない以上脅す道具もないし、明らかに劣勢や。
情報屋もなかなかやるみたいやしな~」



するとようやく彼はわたしを見て、テーブルの上に置いてあるパソコンを見える位置に動かした。



「ほれ、見てみ。もう居場所がバレてるわ」



ディスプレイをのぞき込むと、表示されていたのは一通のメール。



『場所は割れている。荒瀬の報復を受けたくなければ相川壱華を引き渡せ』



たった1行の短いメール。


文章の最後には、小さな梟の画像が張り付けてあった。



「いや~、この梟っての、ぜひうちにほしいわ~。使えるなぁ」



……わたしはまだ、彼らに必要とされてるんだ。


よかったと、孤独から開放された気がして、閉ざされた心のうちに少しの光が差した。



「せやけど……おかしいなぁ、帝王本人からの脅し文句は来えへんで?」



ところが、安心したのも束の間、覇王は悪巧みを思いついたように、ノートパソコンを閉じてわたしに向かい合った。