SIDE 壱華




「……嘘」



信じられない、ありえない。私の頭は混乱していた。




「いいや、お前は生まれながらに西雲会の人間や」



確かに、お母さんの名はカンナだった。


お父さんが彼女を愛おしそうに呼んでいたのを、脳裏の片隅に記憶している。



「じゃあ、どうして今まで秘密にしてきたの?
わたしがその人の子どもだから何?」



数少ない思い出を汚したくなくて、毅然(きぜん)とした態度で聞き返したつもりだった。


けれど声が震えてしまっていて、哀れに思ったのだろうか。望月という男は視線を下に落とした。



「お前はてっきり死んだものだと思われてたんや」

「えっ?」



それから彼はゆっくりと面を上げた。




「14年前、起きた交通事故でな。
お前は行方不明とされた後、死体が発見されず死亡したと判断された」