すると颯馬はいきなり俺の胸倉を掴み、憤慨(ふんがい)した。



「あんたが諦めてどうすんだ!
あの子を救えるのは兄貴しかいねえだろ!」

「あ?誰が諦めるなんて言った!
そんなもん始めから分かってる!」

「……はっ、ムキになったってことは図星か。
そう思うならさっさと動けよ。兄貴らしくねえ」



好き勝手言って笑う颯馬を、動く腕で殴り飛ばした。


俺らしいない?……うるせえよ。



「現状はどうなってる?」

「え?」



殴られた頬を押さえながら起き上がった颯馬に尋ねた。



「現時点でどちらが優勢に立っている」

「こっちが何ヶ所か事務所荒らしにあった。
けど、荒瀬に敵うはずがない。地力で(まさ)ってる」

「サツは動いてんのか?」

「ああ、裏でこそこそ荒瀬系列に属する組長を難癖つけて逮捕しているが、表立っては動いていない」



そうだ。まだ、事は始まったばかりだ。


諦めなんざ、俺の商に合っちゃいない。


……こんな単純なことを、颯馬に気づかされる日が来るとは。




「おい、パソコンとタブレット、それからこれまで調べた極山の情報を寄越せ」

「……兄貴」

「証拠が揃えばサツも極山も終わりだ。俺は俺なりの方法で抗争を終わらせる」






そう、全ては壱華のために。


かけがえのない唯一ともう一度、同じ道を歩くため。