すぐ近くで声がした。知らない男の声だった。


声の方に顔を傾けると、そこには、見たことのない若い男があぐらをかいて畳に座っていた。


わたしは慌てて飛び起きた。



「っ……誰?」



毛先を遊ばせた襟足の短い髪型で、髪色は金髪がかっているけど下品ではない落ち着いた雰囲気。両耳にピアスをつけている。


丸い二重の目で、瞳は明るい茶色。そして尖ったワシ鼻。


一見穏やかそうな瞳の奥には、何か恐ろしいものを秘めていた。


初めて志勇を見た時と同じく、普通の者では醸し出せない『強さ』が彼の周りには漂っていた。




この人は誰?


そんなことより、志勇はどこに?


志勇は何者かに撃たれたんだ。わたしがこうしている間にも志勇は苦しんでいるかもしれない。



「ああ、こらこら、無理して起きんでええって」



男は優しく声をかけながら急に手を握ってきた。



「触らないで……!」



知らない男に触られていたのが嫌で無理やり振りほどいた。


すると男は一瞬、鋭い目つきでわたしを睨んだ。


猛獣のような凄みに、わたしは手を上げられると思って目をつぶって顔を背けた。


ところがその後にあるのは沈黙のみで。


そっと目を開けると、手のひらをこちらに見せて、降参の形で肩の上に手をあげた。




「わかった、触らん。なんもせえへん。
せやからそんな震えるな」




まるで子どもに言い聞かせるみたいに一語一句を強調して安全を示すその男。


方言のせいだろうか、さほど怖く感じない。


だから震えている肩を押さえて、恐る恐る「志勇は……?」と訊ねた。