SIDE 壱華



どうして彼の求めに答えてしまったのかは、自分でも分からない。


謝罪を受け入れるわけでもない、黒帝に対する恐怖が完全に去ったわけでもない。


ましてや今はたったひとりだ。


もし、何かあったとしたら助けてくれる人は誰もいない。



「壱華……」



それでも、重い鉄の扉を開けてしまったわたしは、彼らと対面することを望んだ。


暗い裏口には、光冴もいた。


2人とも、切羽詰った表情をしていた。



「……地下の駐車場までついてきて。そこで話しましょう」



それを察したため、要件は聞かず手招きし、2人を中へ入れた。




そのとき、遠くから、バイクのエンジンを吹かす音が聞こえた気がした。