SIDE 壱華



荒瀬組は三が日を過ぎても年始めの行事に追われていた。


日本一大きな組織であり、伝統のある組だ。時代が変わろうとも昔からあるしきたりは外せない。


だから志勇は忙しさにてんてこ舞いで、わたしはわたしで、センター試験に向けてのラストスパートを走っていた。



だけど今日は志勇が久々に休みが取れたらしい。


息抜きしようと連絡をもらったから、心待ちにして、参考書を見ながらリビングで待っていたけれど。



───ピンポーン




まだ、朝早い時間帯に、インターホンが鳴り響いた。


わざわざインターホンを鳴らすなんて、志勇ではないことは明らかだ。



「……誰?」





嫌な予感が胸の中を渦巻いた。







それは、これから始まる悪夢の、ほんの序章に過ぎなかった。