SIDE 志勇


俺が特注で作らせた椿柄の着物を着て、紅く彩られた唇で瞳に俺を映す壱華。


その美貌をめちゃくちゃに壊したくなると思うのは俺だけか?


燃え広がりつつある欲望を抑え、そっと壱華の柔らかい肌から手を放し、助手席に座る颯馬を見た。



「颯馬」

「なーに?」

「この後の予定は?」

「例年通り。ただ、帰ってもまだ準備ができてないかもね。今年は参拝してすぐ引き返したから」

「そうか……だったら時間あるな」



やはり少し時間が空くかと了解していると、壱華が不思議そうに顔を覗き込んできた。


上目遣いなんか覚えやがって、襲われてえのか?


まあ、これから本家に戻ってそうするつもりだが。



「あー、はいはい。どうぞごゆっくり」



すると察した颯馬がバックミラー越しに苦笑いする。



「え?何するの、志勇」

「秘密」



ニヤリと笑うと察したらしい颯馬は乾いた笑いをし、運転席の剛が俺の笑みをミラー越しに見てピクリと反応した。



「剛に聞いてみたら分かるんじゃねえの?」

「いえ、俺からお答えすることはできないっす」



……なんだ、つまんねえな。


こいつの反応がそこそこだからいじってやってたのに、最近は対応の仕方覚えやがって面白くねえ。


まあ、今はそんなことどうでもいいんだ。



「着いたよ、兄貴」

「ああ、行くぞ壱華」

「え?どこに?」

「いいから来いって。どうせまだ時間はたっぷりあるんだ」

「えっ……ちょっと!?」



そして着物姿の壱華を抱きかかえ、本家に足を踏み入れた。


そこから数時間───言うまでもなく愉しんだ。