繁華街は丑三(うしみ)つ時を回っても静寂を知らない。


14年前、事故で本当の両親を亡くし、父親の弟のもとに養子として出されこの街に移り住んだ。


叔父さんは優しい人だったけど、わたしを引き取って3年で他界。




彼の死後、その家族に養われるようになったけど───それが地獄の始まりだった。






のけ者にされて家では居場所がなくて、いつも叔父さんの書斎で独り過ごしていた。


小学校に通うようになると友達や好きな人ができたけど、姉妹が片っ端から自分のものにしていった。



『今日から美花ちゃんとお友達になるからバイバイ』

『ごめん、俺さ、お前より実莉が好きになったんだ』



傷ついたけど、そんなのまだ(じょ)の口。


中学校に上がると、誰もがわたしの敵になる。



『知ってる?あの子、顔だけはいいからって、寄ってきた男使って妹いじめてるんだって。最低だよね』

『お前、美花のこと殴ったらしいな。
自分で何もできないからって、八つ当たりもいい加減にしろクソ女!』



ありもしない話をでっち上げられて、毎日のように罵声(ばせい)を浴びせられ暴力を振られた。


姉妹たちはその様子を見て(たの)しそうに笑っていた。


もちろん、助けてくれる人は誰もいない。


わたしは中学生にして絶望を味わった。


孤独と痛みと悲しみ。数多の負の感情が重なり、いつの間には笑うことも泣くこともできなくなった。



ついにあいつらは、わたしから表情さえも奪っていった。