その日はとてもとても寒い日だった。


やっと決めた志勇への誕生日プレゼントを店頭で受け取ってわたしは満足だった。


ちょっぴり自慢げにプレゼントの入った紙袋を提げていると、一緒に買い物についきてくれた涼と颯馬さんが話しかけてきた。


ちなみに颯馬さんは今日非番らしい。




「いや〜、愛されてるねぇ兄貴も」

「……喜んでくれるかな、志勇」



私がぼそっと言うと颯馬さんがわたしにウインクしてきた。



「壱華ちゃん。兄貴はなんでも喜ぶから大丈夫」

「本当ですか?」

「うんうん。自分の身体にリボンかけて『わたしがプレゼントよ』なんて言ったら兄貴は1週間は頑張ってくれるはず……痛っ!?」

「デリカシーって言葉を学べ!」



バシンと颯馬さんの腕を叩く涼。


幼なじみらしいふたりは仲がいい。


そんな彼らを見て頬が緩んでなんだか心がはずんだ。








「ただいまー」



その後なんだかんだで3人でお出かけを楽しんで、家へ帰ったのは日が落ちかけた頃。


暗い玄関にはわずかに西日が差し込む程度だったけど、志勇が帰ってくる前にプレゼントを隠したかったから電気もつけずに靴を脱いだ。


それからプレゼントを持って自分の部屋に向かおうとした。







「……」

「……え」





そのとき、目の前に黒い影が立ちふさがっていた。