「煽ってんのか」



「……本当のこと、言っただけ」




昨晩を思い出すような色香の漂う声音にドキッとしたけど睡魔には勝てない。



「わたしは、志勇といる時間が……一番、幸せなの」



夢うつつで言葉にするも、とうとうまぶたがくっつてしまった。


自分の言いたいことをいってからさっさと寝るなんて、ずいぶん薄情な気もするけど、その分素直な人間に成長したと思う。


眠りにつく直前、声が聞こえた。



「俺もだよ、壱華」



優しい声だった。




「だから、お前を引き渡したりなんかしねえ。
お前のその腕の証と、俺の全身全霊にかけて誓おう。
たとえこの先で別つ運命であろうとも『死んでも離さない』」



これはもう夢の中だろうか。


ふわふわした感覚の中で感じる人肌のあたたかさ、大好きな人の声とにおい。


志勇がくれる深い愛情はわたしに勇気を与えた。


その勇気を力に変えて、わたしのつまらない人生、拾い上げてくれた彼に全力で捧げよう。




全てを委ねる覚悟を、このとき闇色のシンデレラは心に決めた。


魔法が解ける時間が——真実が暴かれるときが、刻々と迫っている中で。