「……颯馬、司水にいいように言われたからって調子乗ってんじゃねえぞ」

「本当のことを言ったまでですよ？
颯馬はオヤジに似て一途で、女関係もまったく問題がありませんでしたから」

「……」




志勇は颯馬さんに食ってかかったけど、これまた司水さんが過去を暴露すると、彼はまさかの無言。


……司水さん強い。きっとこうやって狼を飼い慣らしていたに違いない。


元世話役の鋭さに、現在の世話役兼若頭補佐の颯馬さんも苦笑いだった。




「あー、俺も族はやんなかったよ。
ああいう奴らとつるむのは好きだけど統率するとか面倒くさくてさ」

「へえ……」

「女いたし、巻き込むのが嫌だった」



彼もまた族には興味がなかったらしく、代わりに女の子に夢中だったらしい。



「そのときはそれが、何よりも大事だったからね」



兄弟でまるで違うな、と思ったけど遠い目をする颯馬さんに異変を感じた。


それは今なおその女性を想っているということなの？


陰る瞳の奥には、その人が映し出されている気がした。