「汚ねえ手を使う奴らだ。ガキの頃からあいつらの話を聞かされちゃ腹が立ってた」

「そうですね。そのイラつきを人に当てるものですから私がどれだけ困ったことか」



志勇が顔をしかめてそう言うと、司水さんも怒りの冷笑を浮かべた。



「あ?族潰しに手を貸すくらいだ。そこまでじゃねえよ」

「ひとりでいくつかのチームを滅ぼしましたよね?
族に所属していないくせに黒狼(こくろう)と恐れられていたではありませんか。
黒帝が喉から手を伸ばすほど欲しがる人材だったというのに」




司水さんはよほど志勇に苦労させられたのか、見えないオーラで圧力をかける。



「……司水」



ところが、不意に眉をひそめた志勇の低く呼ぶ声に、はっとして口をつぐむ。


ああ、黒帝と発言してしまったことに焦りを感じたのかな。



「ん、なあに?」



でも、意外とわたしは平気だったので知らないふりをすることに。


今は志勇のぬくもりを感じていられるから大丈夫なんだ。



「……そんな時間なかったろうが、お前の『監視教育』のせいでな」

「おっしゃる通りです。社交的で機転の利く颯馬と違って、あなたは頑固でひねくれてましたからね。
そんな志勇も家業を優先できるよう注意を払っておりました」

「……ふん」



そっか、この2人って5年前まで主従関係にあったんだよね。


道理で志勇相手に、沸点際どいところを責められるわけだ。


それにしても、頑固でひねくれた長男って……。




「壱華、今笑ったろ」

「わ、笑ってないよ。えっと……あ、颯馬さんの高校時代は?」

「え、俺の青春時代に興味ある?」



ヤバイと思って颯馬さんにパスすると、彼はおちゃらけて志勇の注意をそっちに向けてくれた。