志勇はわたしの話を聞くと、動きをとめた。


ただ、その目は窓から燦々(さんさん)と降り注ぐ陽の光を追っていた。


感情のない目で眼球さえ動かさず、虹彩に明るい光を映していた。



「そうか」



すると志勇は一言呟き、重たい腰を上げた。


ふらふらと何をしでかすか分からない目つきで、病室の窓の前で足を止める。



「俺はお前から離れるべき、と?」



そして薄いレースのカーテンを引きちぎるように開けた。



「つまり、俺との関係を断ちたいということか?」



さらにガラス窓に手をかけ、勢いよく窓を開け放した。



「それで満足か」



生ぬるい外気が入りこんでくる。


志勇の足音も近づいてくる。



「俺が分かったと言えば、お前はそれでいいんだな」



歩くのを止め、わたしの左側に立つ志勇。


わたしはひたすらに視線を下に向けて白いシーツを見つめていた。





「なあ、壱華」



かすかに怒りを含んだ志勇の声。


それに対して何も反応しないわたしに、志勇の手が伸ばされる。


伸ばしたその大きな手は、わたしの左腕を掴んだ。



「ああっ……!」



激痛が走る箇所を掴まれたのだ。



「痛い!離して!」



当然痛みが走り、身をよじらせて逃れようとするわたしに、志勇はこう言葉をかけた。





「俺を甘く見てんのか」