「ん……」
目を開けると、見覚えのない白い天井が見えた。
……これも夢?
「あっ、痛……!」
しかし、脳が覚醒するに連れてわたしを襲ってきたのは激しい左腕の痛み。
もうここは夢の世界じゃないんだ。
痛みによって曖昧な感覚が現実味を帯び、悲しくなって深く息をつき、目をつぶった。
すると、すぐ近くで誰かの寝息が聞こえた。
痛みを顔をひきつらせながら首をひねると——帝王が座っていた。
腕を組み、椅子の背もたれに寄りかかって寝ている様子の彼。
相変わらず、綺麗な人。
寝ている姿まで魅力的だなんて、そんな男はこの人の他にはいないだろう。
と、改めて彼の魅力を実感したところで、刺激しないようにそっと、呼びかけた。
「……志勇?」
「壱華……!?」
目を覚ました志勇は身を乗り出して、わたしの顔を凝視した。
「起きたか……よかった」
そしてわたしの右手を両手で包んで、その手をぎゅっと握った。
「壱華……」
ぬくもりのこもった手のひら。生きているんだと、彼に触れられて強く感じた。
「志勇、ずっとここにいたの?」
「ああ、それがどうした」
「ちゃんと寝てないでしょう。目の下にくまができてる」
「平気だ。お前のそばにいてやれない方が辛い」
「そっか、ありがとう志勇」
ここがどこなのか知らないし、現在の時刻も分からないけど、志勇がいるならそれでいい。
そうして安心したせいなのか、睡魔に襲われた。
「もう大丈夫だ。しばらく寝ておけ。ここにいるから」
「うん、おやすみ……」
志勇はおやすみという代わりに、わたしのひたいにキスをした。
それを夢うつつで感じて、ゆっくり夢の中へ落ちていった。



