真夏の真っ只中、騒がしく蝉が合唱する鬱陶しい季節。


案内されたのは暑苦しい厨房。


力さんの他に2人いる本家の厨房の方を軽く紹介してもらい、早速わたしにキンキンに冷えたお茶セットと木のおぼんが渡された。



「これを姐さんの所まで運んでもらえますか。姐さんは客人と中庭にいらっしゃるんで、渡してください」

「はい、分かりました」



と、歯切れよく返事をしたところ、渡されたものに気になることが。


あ、これって……。



「あと、それが終わったら昼飯に取りかかるんで、10分以内には戻って来てほしいんですけど……あの、何か?」

「いえ、今日もお母さんのイチオシの和菓子を用意されてるんだなって」



わたしの視線の直線上には、以前いただいた和菓子が乗せられていた。



「えっと、そうですね。簡単に手に入るものじゃねえけど、これは姐さんが好きなんで」

「さすがですね」

「え……いやぁ、そんな」



彼は頭をかきながら照れ隠し。


あ、そういえば力さんって褒められることに弱いんだっけ。



「では、行ってきます。10分後に戻ります」



とりあえず仕事しなきゃと、冷茶とお菓子のセットを持ち上げ、いざ、初仕事へ向かった。