チーン






にわかにフロアへ響くエレベーターの到着を知らせる音。





来た。




北の帝がはるばる東へ。


それは実莉の求める強い男。


龍のような力強さと邪悪な瞳。


あぁ、ゾクゾクしちゃう。




だけど焦りは禁物。


迂闊(うかつ)に近づいたら実莉だって殺されかねない。


その危険さが、逆に想う心を加速させるの。


女にとって危険な男は目を引くものでしょ?


ましてや三大暴力団のひとつ、北を従える若頭なんて誰もが手を出せる相手じゃない。



だから抑えて抑えて確実に、残虐な『魔王』の視界に入るの。






「こんばんは、総司(そうし)さんっ」








残念だねぇ、壱華。


実莉たちには『帝王』に勝る『魔王』が後ろ楯についてる。


たとえ東の狼だってこの北の龍からは守り切れないはず。




ねえ、可哀想なシンデレラ。


あなたはこの世にサヨナラする準備はできてる?


そのときは、もうすぐそこだよ。