「お前が、相川壱華か」




名を呼ばれ、男と目線が合う。


そこにいたのは、黒を身にまとい、瞳に妖しい光を宿す男。


(うるし)のような艶やかな瞳は息を飲むほどの美しさだった。


常人では(かも)し出せない雰囲気に、整いすぎた顔立ち、出会って数秒で只者(ただもの)でないと察した。



「嫌、放して!」



だからなのか、直感が危険だと警告している。


きっとこの男も黒帝の仲間なんだ。


だからわたしのことを知っている。


そう思って掴まれている手首を全力で振り払おうとした。



「放さねえよ。やっと見つけたんだ」

「痛い……」



だけど力が強すぎて足掻くこともできない。


正直、体力も底を尽きている。


もう、ここまでか。