「何度でも言ってやる。
俺の唯一はお前だ。誰にも渡さねえ」



その声は全身を駆け巡る電撃となった。


それは志勇に首筋噛まれ、傷みを覚えるまで、魔法のように五感を痺れさせていた。





「これは誓いの印だ。俺から離れないように」




肩の辺りに顔をうずめた志勇が囁く。


首に華やかな赤を残して、狼が噛みついた。


噛まれた部分が焼けるように熱い。


これが増える度に嬉しいと感じるわたしは狂っているのかもしれない。



仮に狂っているのだとしたら、何を戸惑う必要があるのだろうか。


これまでの人生を引きずるくらいなら、いっそ開き直って、道を外れてしまえばいい。


シンデレラはそろそろ悲劇のヒロインをやめるべきじゃない?


闇の帝王の隣に立つ人間が、悲壮感に満ちた女なんて似合わない。



「ねえ、志勇」



そうして初めてわたしから唇を重ねた。


ただ触れるだけの不器用なキスを贈る。



「これはわたしからの、誓いの答えね。
どんな形であれ、わたしたちの未来が続くように」




見かけなんて必要ない。大切なのは言葉と人を想う姿勢。


あなたが教えてくれたこと。




「ああ、誓おう。決して切れない絆と、この刹那を共にするための永遠を」



冷酷な帝王の美しい笑み。


その漆黒に(まと)われ、闇に染まるシンデレラ。


降りしきる雨音と雷鳴が響く中2人は強く抱きしめ合った。







この関係を引き裂く脅威はないと、一途にそう信じて。