わたしを視界に入れた2人は、ふらりとこちらへと足を進める。


……来ないで。


こっちに来ないで。


奴らはもう、手を伸ばせば届く距離にいる。


足元に攻め寄る底なしの闇がわたしを襲う。




「……今からでも遅くはない。こっちに戻れ」

「壱華、今ならまだ逃げられる」



何を言っているの?


わたしの居場所を奪おうとしないで。



「……や」



拒絶したいのに、否定したいのに声が出ない。息もできない。


視界が大きく揺れて、足がぐらつく。




「逃げろ。お前の居場所はここじゃない」



やめて。聞きたくない。何も知りたくない。


堪らず耳を塞ごうとしたそのとき。



「壱華、お前は……」



手首に絡む、理叶の細い指。




その瞬間、極度の緊張状態に陥った身心がついに『壊れる』。









「っ、いやああぁぁ!」