「憂雅くん、そろそろおしまいにしよう」



かくれんぼを始めて約10分。


何度か繰り返している内、憂雅くんが見つからなくなった。



「雨降ってきちゃうよ。もしかしたら雷が鳴るかもしれないよ……はあ、だめだ見つからない」



気がつけばここがどこなのか、よく分からない場所にいるし。


そういえば志勇にメールのひとつも返してあげてないし。


返したいけど憂雅くんが見つからない以上、ほっとくわけにはいかないから捜索。




「ん……憂雅くん?」



すると、廊下の向こうから人の声が。


憂雅くんじゃなかったら怖いので、あまり音を立てないように歩いてそっとのぞいくとそこは玄関だった。


玄関にいたのは、客人を迎えに来たらしい司水さんと、数名の男の人。


彼らを目にした瞬間、何か引っかかった。


それは嫌な予感だった。


急いで引き返そうとしたけれど、ちょうど靴を脱いで上がったひとりの男性が、頭を上げた。











───逃げろ。








その顔を認識した瞬間、本能が警鐘を鳴らす。





───殺される。




再会することを最も恐れている人間が、すぐそこにいる。


忘れかけた恐怖が足下から迫ってくる。


頭では分かっているのに、逃げないといけないのに、足が動かない。


瞬きもできないわたしを前に、ついに相手の目は、わたしの存在を瞳に投影する。


目を見開いたその男は、ゆっくりと、ゆっくりとその口を動かせた。










「壱、華……?」