SIDE 剛



いつからだろう。


いつから俺はあの人を『若頭の女』としてを認めたのだろうか。


まるで本物の親子のように手をつないで笑い合う壱華さんと憂雅を目で追い、ふと自問した。




若の側近となって、早5年。


その年数は俺の父親が亡くなってからの年月と一致する。


5年前、北からの襲撃により命を落としたのは、何も憂雅の父親だけではない。


俺の父も、オヤジの盾になり死んだのだ。



俺はあのとき19のガキで、まさか自分が父と同じ立場になるとは思ってもおらず、固定した仕事には就かないで行き当たりばったりな日々を送っていた。


その生活に終わりを告げたのが、肉親の死。


俺はあの日を境に、組の若頭のために尽くす側近という職業に就くこととなった。




それから5年。


この世界に慣れ始め、側近として信用を得る存在となった近頃。



若がひとりの女を拾った。



それはあまりにも衝撃的で鮮烈な出来事だった。