長い廊下を歩く先に見える、襖に描かれたの唐獅子(からじし)の絵。


通称『金獅子の間』に入った親父は、背後に俺と司水を連れ、そこで足を止めた。


普段大事な客人ならここへ連れてくるが、今日は別の客間に案内させた時点で、親父は壱華を歓迎していないということだろう。




「志勇、そろそろ時機じゃねえのか」


「何がだ」



予想通りの親父の言葉に、ため息をつきそうになる。


それを(こら)え、ぶっきらぼうに応答すると、とぼけるな、目で訴えられた。








「あの娘、お前に懐いているなら、使え。

西に送れ」