翌週、剛さんの愛車に揺られ、志勇に連れられ訪れた目的地。




「若、お帰りなさいやせ!」



時代劇のような大きな門をくぐると、ビリビリ響く男の野太い声。


約20名、金髪やスキンヘッド、黒スーツに柄シャツなど着た色とりどりのヤーさんが目に眩しい。


本家は対照的に荘厳な雰囲気で、白い壁、もしくは鉄の柵に囲まれた由緒ある2階建て、屋根瓦の日本家屋。


加えて、旅館のようなどでかい玄関に続く石畳。


ひしめく人の間からは高い松の木が根を下ろし、大きな池がキラキラ日光に反射していたり。


さすが荒瀬組。これぞヤクザの本拠地って感じの立派なお屋敷だ。



「いらっしゃい」



だけど歓迎されても挨拶されても、ビビりまくりなわたしは頭を下げることしかできない。



「チッ、なんだこれ」

「久々だからね、こうして正式に兄貴が帰るの。
それに今日は壱華ちゃんもいるし」

「あ?じゃあこいつらは壱華が見たくて並んでるってことか。全員消す」



舌打ちをした志勇は、颯馬さんの言葉を飲み込むと同時に、石畳のど真ん中で歩を止めた。


……なんで一番注目を浴びるところで止まった。


進みたいけど、こういうときは勝手に先導してはいけないと思う。


ここは荒瀬組の本家だし、女は一歩身を引いて男についていくものだ。



「志勇、行こうよ」



だからわたしには、志勇の服をそっと引っ張ることしかしちゃいけない。


出しゃばる女はろくなことにならないって、あの姉妹を見て学んできたから。