「このまま押し倒したいが……残念ながら今日はここまでだ。
事務所と本家に用事ができたんでな」



好き放題できてご機嫌な志勇は、抱き上げたわたしをソファーに座らせた。


脱いだシャツを手に取り、背中の黒狼をその下に隠す。


どうやら、これから仕事へ行くらしい。


今から出たら、いつ帰って来られるかな。


若頭という役職柄、丸1日帰って来ないこともあるから、そういうときは部屋にこもって勉強してる。


試験まで2ヶ月とちょっとしかないもんな。


寂しいけど、ひとりでお留守番も平気になってきた。



「悪いな、相手してやれなくて。帰ったら可愛がってやるから待ってろ」

「っ……いいから、早く行かないと」



だけどこの色魔には慣れることができそうにない。



「ふっ、いってくる」

「……いってらっしゃい」



やられた、赤面してるって自分でも分かる。



「ああ、それから」



頬に手を当て冷やしながら志勇を後ろ姿を見ていると、彼は振り返ってリビングに声を渡らせた。



「壱華、来週の週末空けとけよ」



来週の週末?


もちろん、わたしは仕事も学ないし校も行ってないからヒマだけど。


なんでそんなこと言うんだろう。



「お前を本家に連れていく。おふくろが見せろ見せろってうるせえからな」


「え……?」



それって、つまり……?