いつもより熱く、より伝導する体温と鼓動。



「壱華」



逃れられるはずなくて、顎を指先で持ち上げられた。


熱を帯びた志勇の目は、わたしをゆらゆらと瞳の奥に映す。


こうなれば絶対に逃げられない。


両手で頬を包まれて、最初はそっと優しいキスを唇に落とす。


それから確認でもするみたいにもう一度目を見て、舌を絡ませる深いキスへ変わる。



「志、勇……っ」



息すら喰らい尽くそうとする狼は、獰猛(どうもう)で荒々しくて、油断すれば全て飲み込まれてしまいそう。


歯列をなぞられ、どうしてか甘く感じる唾液を溶かし合って、身体中が痺れる感覚に見舞われる。



「っ……だめっ」



相変わらずキスのときの呼吸の仕方が分からないわたしは、とうとうかくんと膝が折れた。



「もう降参か?」



崩れかけた身体を抱き止め、赤い舌で口の端を舐める志勇は、物足りない様子。


だけど志勇はわたしに無理強いをさせない。


抱こうと思えばわたしなんてどうにでもできるはずなのに、大事にされてるなんて感じる。



「足りねえよ。もっと啼け」

「ん、やぁ……志勇」



その代わり志勇は弱いところを次々見つけて、とことん責めてくる。


それは首筋を舐められることだったり、お腹のくびれに沿って指でなぞられることだったり。


弱点を集中して責められるものだから、いつも簡単に腰を抜かしてしまう。


もう、認めるしかないんだろうか。


この人に抱かれることは時間の問題かもしれないと。