闇色のシンデレラ

SIDE 壱華


わたしは弱くなった気がする。


別に強いわけじゃないけど、ちょっと前までは美花と実莉に何を言われても我慢できていた。


だけど今日はたったあれだけで揺らいで、負けそうになった。


底なしの暗闇に飲まれて、震えが止まらなくて、来てくれた志勇に応えられなかった。



ただ覚えているのは、まっすぐ目を見て語りかける志勇に、ちゃんと聞こえているんだって示したくてそっと服を掴んだこと。


すると志勇は人がたくさんいる中で抱きしめてくるものだから、安心したことより恥ずかしかったことを思い出す。



そして現在、お家に到着して、くつろぎ中の志勇の膝の上。


目を伏せた志勇の長いまつ毛を観察しながら、リビングで二人きり。



「静かだね」

「ああ」

「くっついて暑くない?お茶入れようか」

「離れるな。落ち着かねえ」



立とうとしても腰を引き寄せられ、ソファーに戻される。


勝手に買い物したこと、志勇は怒っていないみたいだけど、かわりに感じ取ったのは、不安。



「ごめんね、志勇」



志勇にその感情を与えてしまったのはわたしだと思い謝ると、彼は(いぶ)かしげな表情をして見てくる。



「わたしって弱いね」

「……」

「捨てたくなったら、いらなくなったら、わたしのこと手放していいから」



こんな面倒くさくて弱い女、志勇は嫌いだろうな。


でも、あの姉妹に言われたことがまだ脳裏をちらついていて。


もういいや、捨てられてもいいやなんて投げやりになっていた。