「あー、お姉ちゃん、あそこにいるよぉ?」
「へえ、ホントね。まだ生きてたんだ」
どこからともなく、忘れもしないあの声がした。
美花と実莉の声がする。
「ふん、さっさと捨てられればいいのに。
何がシンデレラよ、勘違いも甚だしいわ」
「ふふっ、お姉ちゃん言い過ぎぃ。目の前にいるのに聞こえちゃうよ」
今度こそ、勘違いなんかじゃない。
確実に、すぐそこで、2人の音声が鼓膜を震わせている。
そしてそれは、わたしに向けられていた。
見てはいけない。耳を澄ませてはいけない。
分かっているのに、人の心理は逆に作用する。
見たくない。見てはいけない。
暗示をかければかけるほど、動きは鈍り、ついに足が止まる。
ぎこちなく首を回すと、そこには───
「聞こえたって、構わないよね?あんたはただの操り人形なんだから」
「そうだね、壱華には『シンデレラ』より『マリオネット』の方がぴったりかもぉ」
全てを奪い尽くし、自らの快楽のためにわたしを地獄に堕とした姉妹。
変わらず冷たい視線を飛ばす、ふたつの悪魔の顔が並んでいた。



