「いらっしゃいませ」



早足で歩を進め、涼といっしょに入ったお店。


黒とピンクを基調とした店内は、それっぽいというかなんというか。



(じゅん)ちゃーん!久しぶり」

「いらっしゃいませ涼さん。お久しぶりですね」



入り口付近で、ハニーブラウンの巻き髪に派手なメイクという外見とは裏腹に、丁寧にお辞儀するミニスカの店員。


ちなみに剛さんと力さんはこのお店には入ってこない。


だってここは。



「ほら、外見てごらん、ちゃんと剛連れてきたよー」



繁華街一の、ランジェリーショップだから。



「ちょ、ちょっと、聞こえちゃいます!」

「聞こえない聞こえない。潤ちゃんったら慌てちゃって。
ふふっ、やっぱりいいわね。恋する乙女って」



この頃下着のサイズが合わなくなってきて、涼に新しい物を買いたいと相談したら、このお店に連れてきてくれた。


なんでも志勇はここでわたしの下着を買ってきたらしい。


……あのスケスケで悪趣味な下着を。



「せっかくだから話してみたら?剛呼んでこよっか」

「ダメです!お仕事中ですし、見てるだけでいいんですから!」



ところで、この潤という店員さん。


剛さんの名前を出した途端、顔を真っ赤にして頻繁にそちらを見ている。


この子、あの強面で厳つい剛さんが好きとか───まさかね。


そんなとき、剛さんさんから視線を外し、じっとわたしを見る彼女の視線に気がついた。



「初めまして、潤です。本日はご来店ありがとうございます。ずっと心待ちにしておりました」



笑った彼女の顔は幼く見えた。


だけどしっかりと目を見ることはできない。


初対面の人と目を合わせるのは苦手。


どんな視線を向けられるか怖いから。



わたしがきちんと目を見て話すことができるのは志勇だけ。


それだけ、志勇はわたしの特別な存在になりあつあった。