「壱華、またか。俺がいるってのに涼を優先する気か?」



涼に尊敬の眼差しを向けていると、何を勘違いしたのか、低いトーンで注意を促す志勇。




「まあまあ兄貴。涼は女なんだからそんなにヤキモチ焼かなくてもさ……」

「黙れ。壱華の1番は俺じゃねえと意味がねえんだ。
それに壱華が視界に入れた奴はもれなく敵だ」

「そんなのキリがねえじゃん」

「あ?そういう意味じゃねえ」

「ん?どういう意味だよ」



颯馬さんが志勇をなだめようとしてくれてけど逆効果。



「うるせえ、そのくらいてめえで考えろ」

「あのね、まずうるさくないし、理解不能なんだけどな」



ちょっとした兄弟喧嘩が勃発してしまった。


まったく、どっちが兄でどっちが弟なんだか。




「壱華、これはチャンスよ。行こう!」



するとすぐ近くで聞こえた涼の小声。


手を握られて涼を見ると、すぐ近くに剛さんを待機させていた。


涼は偶然にもここから正面にある目的のお店を親指で差している。



確かにこれはチャンス。


志勇を置いて勝手に買い物するのは申し訳ないけど、今回の買い物は志勇がいたらろくな物が買えない。


そう考えたわたしは頷き、繰り広げられる言い争いを見守っていた、剛さんを拝借してそそくさと退散した。