すると志勇はつかんでいた手首を放し、さらに近寄ってきた。


流れるような動きでわたしを抱き上げて、いつもの定位置に、脚の間に座らせた。



「あっ、やめて……」

「何もしねえよ」



さっきの続きを再開されると思ったわたしは志勇の手を押さえたけど、志勇は落ち着き払った声で一言。



「……お前、なんかいい匂いすんな」



深く呼吸して抱きしめて、ご満悦の様子。


そっか、涼にシャンプーしてもらったから、いつもとにおいが違うのか。


志勇がこの匂いが好きならシャンプー変えよう。


なんて、抱きしめられてぬくぬくしてる呑気なわたしは、つい何分前の出来事も忘れて、適当なことを考えていた。




「怖いなら待ってやる。ただし、その間も俺は手を出すからな」



しかし、吐息まじりの声に先ほどの感覚が舞い戻る。


……志勇はズルい。


強引になったり、優しかったり、意地悪だったり、急に男の顔を見せたり。



「弱いとこ見つけて、じっくり、責めてやろうな」



だからこんなこと宣言されても逃げられない。


理性が働かなければ、きっとわたしの身体は志勇を受け入れてしまう。


そのくらい、とことん魅力にあふれた人。