わたしは彼に、求められている。


志勇はわたしを欲している。


そう思うと、電撃が走ったように動けなくなってしまった。



「壱華」



気がつくとわたしはリビングのソファーに押し倒されていた。


頭の中を反響する官能的な声と、肩あたりに顔をうずめて首筋を這う熱い舌。


首に吸いつくように甘噛みを繰り返す志勇。




「いっ……」

「こんなことするのもお前だけ」



それが突然明確なものへと変わり、針を刺したような痛みを覚える。


志勇は白い歯がのぞく口元をわたしに向けて、妖しく、そして美しく微笑んだ。



……思えば、最初から無理な話だった。


頭からつま先まで、立ち振る舞いから揺るぎない意志まで、完璧なこの男に惚れないようにするなんて。


認めてしまおう。


どうしようもなく志勇に惹かれてしまってると。



「壱華、もうお前しか抱かない」



……え?



「あ、志勇?……ねえ」



ちょっと待って。


抱くとか抱かないとかそういう問題じゃなくて、わたしは経験ないんだって。


こういう話に触れたことないから言ってなかってけど、初めてなんだって。



「んっ!」



言いよどんでいるうちに、志勇の指が下から上へウエストに沿って服の中に入ってきた。


手の位置は徐々に上がり、下着の上から形をなぞるように胸をなでられる。


ゾクゾクして、きゅうっとお腹の奥がうずいた。



「あのね、んっ……は、はじ……」



反応してしまう。


初めてだなんて、恥ずかしくて言えない。


でも、流されちゃだめ。ここは言わないと本格的にヤバい。



「初めてだから怖いの!」