SIDE 志勇


潮崎組での用事を早々に済ませ、壱華のためもうひとつの野暮用を終わらせた俺は、真っ先に壱華の元へ。


そのせいでだいぶ時間を食ったが、どうせあの女───涼のことだ。


ガキの頃から変わらず減らず口のあいつなら、壱華の相手になってやれるだろう。


馬鹿としかいいようのない弟とは違い、あいつなら信頼できる。



「若、ごくろうさまです」

「剛、壱華は?」

「はい、あちらに……」

「あ、ちょっとあんた、予想以上に壱華がすごいことになったんだけど!
どうしよう、あたし天才!?いや、シンデレラを変身させたんだから、あたしは魔法使いってわけねっ」

「いいから黙れ。壱華が見えねえ」



……前言撤回。こいつも馬鹿だ。



「壱華」



気を取り直して、俺の目は一番重要なものを探す。


室内を見渡し、目についたのは、ゆるく巻かれた優美な黒髪。



「志勇……」



見返り俺と見合わせた壱華の妖艶さに、息を飲んだ。


薄桃色に色づいた頬に、艶やかな赤い唇、大きな瞳はいつもより澄んで見える。


そこには───



「志勇?」



天使がいた。