というより、わたしは志勇の近くにいながら、彼を知ろうともしなかった。


どうせ遊ばれてるだけ、いつかは捨てられる。


彼が何を企んでる分からなくて、志勇を疑うばかりで。


でも結局それは間違いなのかもしれない。


知らなくちゃ何も始まらないなら、自分から変わらなくちゃ。


まずは何事も逃げないことから。




「涼は二十歳なんだ」

「そうなの、仕事に熱中してたらいつの間にかこんな歳よ。あっという間におばさんになりそうで怖いわ」




そうして会話を展開すると、疑問が生じてきた。


今二十歳ってことは、涼はいつから美容師なんだろ。



「ああ、わたしね、高校は行ってないの。
中学卒業してすぐ専門学校に行ったから、美容師になって今年で3年目ね」




すると、表情から疑問を察して取ってくれた涼に、わたしは以前より表情筋が動くようになったと思った。


まだ笑うことや泣くことはできないけど、少しずつ変わってきてるんだと、前向きになれる気がする。



「独立するっていう先輩についてきて開いたのがこのサロン。
今は2人で経営してるから大変だけど、すごく楽しいよ」



それにしても、わずか3年で美容師として立派に仕事をしている涼はすごい。


きっとそれ相応の努力をしたはずだ。


わたしも、こんな人になりたい。


底抜け明るくて、人を寄せ付ける魅力をもっていて───志勇の隣に見合う女になりたい。


なんて、最近わたしはずいぶん欲深になってきた気がする。