「あの、涼さんって……」

「ヤダ〜、組の野郎共みたいな呼び方しないで、涼でいいわ。敬語もいらないから。それで?」



……野郎共って。やっぱり彼女は本物のお嬢なんだと悟った。



「……涼は、志勇と幼なじみ?」



意を決して問うと、涼は人相が変わるくらい怪訝(けげん)な顔をした。


ああ、綺麗なお顔が……。



「幼なじみ?うちの組が荒瀬組所属だから、知り合いなだけよ」



嫌々話してくれる涼を見ていたら、ふと後ろでヒヤヒヤしながらこちらを観察している剛さんと力さんが目に入った。


どうしたんだろと視線を飛ばすと、鏡越しに剛さんと目線が合った。



「あの、潮崎組の組長は、最高顧問に務めてらっしゃって……。
最高顧問は荒瀬組の相談役みたいなもんで、オヤジと五分兄弟の盃を交わしてる方っす」



すると、涼の顔色を見ながらご丁寧に詳しく教えてくれた。


なるほど、潮崎組の組長さんは格上の地位らしいってことが判明。


じゃあ長男である理叶は、組を継ぐのかな。


彼について連想してしまうのは、まだ理叶を意識しているからなのか。


こんなこと、考えてもキリがない。今は涼の話に集中しよう。



「しっかし、志勇も馬鹿みたいに忙しいのによく若頭なんてやるわね。大学もちゃんと行ってんの?」

「へい、来年の3月には卒業だそうで」


「……え?」



大学?卒業?


志勇、大学行ってるの?若頭なのに?


志勇って、あの貫禄であのオーラで、キャンパスライフ送ってるの!?


てか、わたしってば、志勇のこと知らなすぎる。



「あたしより2こ上だから……あいつ今年で22か。あたしも老けるわけだわ」



……負けた。


懸命の問いかけは、敗北感にうちひしがれてしまう結果となった。