そんなお母さんが今のお父さんの言葉を聞いたら、何と答えるのだろう。

そんな答え、考えるまでもなかった。


「きっと、幸せだったよ。たぶん、今も」


あたしの言葉に、お父さんがこちらを見る。


「幸せだったから、その幸せを、平穏な日々を壊したくなかったから・・・だから、お母さんはこの状況を望んだんだよ。医師としてのお父さんの時間を、邪魔しないために。そんなお母さんが、不幸なわけないじゃん」

「・・・ありがとうな、結可」


そう言うと、お父さんは立ち上がる。


「迷惑かけるが、母さんのこと頼むよ」

「任せて」

「俺は母さんに嫌われないように、自分の仕事をしてくるよ」


ポンッとあたしの肩を叩くと、お父さんは再び病院へと戻って行った。