昔からお母さんは、お父さんが仕事に集中出来るように身の回りの世話を全てしていた。

お父さんの体を気にかけ、栄養バランスの良い食事を用意するために、よくわからない資格まで取っていた。

そんなお母さんが、お父さんのことを残して来るわけがない。


「で、何があったの?」

「結可には、敵わないなぁ」


お母さんが、ニッコリと微笑む。


「お母さんね。病気になっちゃった」

「病気?」

「うん。余命宣告もされた」


余命、宣告?

お母さんの言葉に、驚きのあまり言葉を失う。


「こないだ結可が帰って来たときに話そうかとも思ったんだけど、看護師の結可には話したくなかった」

「どういうこと?」


意味がわからず、あたしは聞き返す。