こんな奴と、話すだけ無駄だ。


「また、やってんのか?相変わらずだな、お前たち」


そうに声を掛けてきたのは、ここの医院長でもある、あたし達のお父さんだ。


「結可が一々うるせぇんだよ」

「煌樹が自分勝手なんでしょ」

「お前たち、その辺にしときなさい。職場で兄弟喧嘩なんて見苦しいぞ」


お父さんの言葉に、互いにフンッと鼻を鳴らす。

そう、この自分勝手な男は、あたしの兄だ。

兄と言っても、あたしたちは五つ子なので同い年。

兄弟というより、友達に近い存在だ。


「無理言って悪かったな、結可」


お父さんの言葉に、煌樹が突っ掛かる。


「俺にはいつも、無理ばっか要求してくるくせに」

「煌樹。そんなに言うなら、午後の外来はお前に任せる」


ポンッと煌樹の肩を叩くと、お父さんは背中越しに手を振って、その場を後にした。