《柿原》

出た。またこの依頼か。
年に数回必ず依頼されるこの任務。どこぞの大企業の息子の警護。
謝礼もはずんでもらってるらしいから絶対に上は断らない。実際動く俺らの身にもなってみろ。
警護って位置づけでも、実際にはあのバカ息子のお守だろうが。
前回はタイプの女がいたからって、勝手にどこかふらふらと出歩いたんだぞ。
身の危険はないんだからこっちとしてもそこまで過剰な拘束はできない。他の目がある以上はルールに則らなければならない。
たとえ、大学に行かない息子をどうにか1日だけ連れて行ってほしいというふざけた依頼でもこなさなければならない。

「大学生?
へぇ、わざわざ大学に通学するために護衛つけるなんて、おかしな話ですね。大金でも持ってるんですか?」
「そうでもしないとこのバカ息子は大学行かなかいからな。単位を落とされたら困るっていう親の意向だ。
今まで俺も仏の顔で接してたが、そろそろ封印だな」
「仏…。笑うところですか?」
「あ?」
軽口叩く小澤を人睨みして、任務の準備にとりかかる。