鬼の目にも慕情

あの柿原隊長が…。
あの八城さんが…。

あの八城さんが…。

八城さんが…。

八城、さん?

あれ、苗字が違う。
なんで?
そんなことって有り得るのか?
これはもしかしたら、あの指輪も並んで仲睦まじく歩いて見えたのも俺の見間違いなんじゃないのか?

「どうした。何か変なものでも見たか?」
放心状態で部屋に戻ると、読書中の天海がいた。
そうだよ。世にも奇妙なものを見たんだよ。
相変わらず、観察眼鋭すぎだろ。
「勇哉!」
「なに、急に」
「苗字が違うってことは、結婚してないってことだよな!?」
そうであってくれ。
そうじゃないと、困るんだよ!
「何言ってんの。今はそういう夫婦も多いでしょ?
仕事上苗字を変えると大変だから、旧姓のままって人もうちにもいるよ」
「え…、そうなの?」
「何?
一気に落ち込むじゃん」
だって、そしたらやっぱり柿原隊長が結婚してるってことになる。

そう口から出かけたところで、急ブレーキをかけた。