強がりな私の日々

ー翌朝

ガチャ、ドアが開いた。

奏翔「起きたか?はい、ミドドリン。起き上がれるか?」

起きてすぐに薬を飲まなきゃだけど、私は首を振る。無理だ。起きてすぐに起き上がれるわけがない。それに夜中の発作で寝不足だ。

奏翔「分かった。少しだけでいいから。俺支えるから。薬飲まないといけないし」

「いい、病院だから寝ててもいいし。もっと頭痛くなるから。」

奏翔「ダメだ、お願いだから飲んでくれ。ゆっくりでいいから。」

私は奏翔さんに支えられ、何とか上半身を起こした。目眩がする。そして薬を飲むと、奏翔さんが聴診をして、また私は寝た。

奏翔「10時には起きろよ。ご飯はその時何か持ってきてくれるよう、愛川さんに頼んどくから。それまでにもっと体調が悪くなったら、ナースコール押すこと。」

「はい」

奏翔「じゃあ、俺は一度帰るな。また夜には病院来るから」

奏翔さんが部屋出て私はもう一度、目をつぶった。身体が少し楽になったら起き上がろう。

しばらくして目覚めて起き上がらずにゴロゴロしていたら10時になった。

ガチャ、ドアが開いた。

愛川「夢菜ちゃん、起きた?」

「はい」

愛川「体調どう?とりあえず熱と血圧測ろっか。」

愛川さんが血圧と体温を測って記録を取っている。熱は下がってない。むしろ、上がってしまった。37.9℃だった。

愛川「夜中、発作出たんだって。私夜休みで、朝宮田先生に聞いたよ。」

「はい」

愛川「大丈夫だった?次からはすぐ呼んでね。」

「はい、ありがとうございます。」

愛川「ロールパン1つとヨーグルト持って来たけど、どっちも食べれる?」

私は首を振る。ほとんど動いてないからお腹なんてすいていない。

愛川「どっちかだけなら食べれる?何か食べてもらわなきゃ私怒られちゃう笑」

「じゃあ、ヨーグルトで」

ヨーグルトを食べて点滴をしてもらい、またゆっくり過ごすことにした。熱が下がったら、小児病棟に行きたい。私は子どもの世話が大好きだ。ここの子どもたちはみんな私と仲良くしてくれる。その時間が入院中の楽しみだ。だから、早く熱下がるといいなぁ。

私はいつの間にかまた寝てしまっていた。お昼ご飯も少ししか食べれず、ベッドの上で単語帳を見ているか寝ているかで3時まで過ごしていた。あいかわらず頭は痛い。奏翔さん何時に来るんだろう。夜寝ていなかったと思うから、多分寝に帰ったんだと思う。医者とは言え、人間だ。休まなきゃいつか体調を壊してしまう。ちゃんと休めてるといいな。

ガチャ、そんなことを考えてるとドアが開いた。あれ?早くない?まだ夜じゃない。

省太「夢菜、どうだ?熱上がったんだって?」

「あ、省太先生。うん」

省太「昼過ぎてから熱測った?」

「測ってない」

省太「じゃあ、はい」

省太先生が体温計を渡してくれて熱を測った。37.7℃だ。良かった。下がってる。

省太「んー、下がってるけど。これは様子見だな。勉強やスマホは長時間したらダメ」

「明日、みんなに会いに行っていい?」

省太先生は小児精神科医だ。だから、私が子どもたちと遊ぶのを楽しみにしているのを知ってる。

省太「熱下がったらな。後、病棟まで車椅子で連れてってもらって必ず誰かと一緒に行くこと。許可下りてないのに勝手に1人で行ったらダメだぞ。」

「わかった、ありがとう。ちゃんと寝て治す。」

省太「ちゃんと言うこと聞くじゃん」

私がいつも無理してばかりで、言うことを聞かないから褒めてくれているんだろう。でも、これは自分のためじゃない。自分のためだったら、私は多分言うことを聞かない。子どもたちに風邪が移ったら良くないからだ。

「みんなに移したらいけないから」

省太「そうだね、よくわかってるじゃん。みんなも夢菜といるの楽しいみたいだから治そうね。」

「じゃあ、寝る」

省太「あっ、でもごめん。ちょっと話聞かせて。身体しんどくない?」

「うん、大丈夫だよ。なあに?」

省太「昨日の話続き。」

「嫌だ」

辛いことを思い出すなんて嫌だ。わかってる。省太先生が私の力になるためには、情報共有が必要なことは。

省太「ごめんな。でも、俺ちゃんと知って寄り添いたい。1人で抱え込んでたら辛いだろ。」

「わかった、ありがとう。」

私は省太先生にこの2ヶ月の間にあったことを色々話した。
引越し作業をしている数日の間に母の経営する会社の1つでトラブルが起き、1日だけおじさんと2人で過ごすことになり、性暴力を受けたこと。新しくなれない環境で気を使ってばかりで心が壊れてしまって自分を傷つけてしまったこと。


話したくなかったけど、話すと少し心が楽になった。省太先生は泣きながら話す私の背中をさすりながら、何も言わずに真摯に話を聞いてくれていた。そして、私は泣き疲れてまた夜ご飯の時間まで寝てしまっていた。

ー数時間後

ガチャ、夜ご飯の配膳の時間に奏翔さんが部屋に来た。

奏翔「体調どう?ほとんど寝てたんだって?」

「んー、なんか疲れてて」

奏翔「とりあえず熱測るか」

奏翔さんに渡され、体温を測った。ほとんど寝てたからか少し下がった。37.2℃だ。身体も楽になったし、明日の朝には平熱に戻ってるだろう。

奏翔「このまま下がるといいな、ご飯は食べれる?」

ほとんど寝てたせいかお腹はすいていないと思っていたが、食べ始めると昨日よりも食べることが出来た。そして、本当は奏翔さんにやめておけと言われたが、課題が残っているのは気持ちが落ち着かなかったので、課題を進めた。夜中もぐっすりと眠ることが出来た。