I miss youの言葉には、賞味期限がある。ウィリアムの隣が空白ではなくなったら、誰かの居場所になってしまったら、もうこの台詞は使えない。愛を謳うこともできない。

そう何度も思っても、いつも口に出せないままだ。告白することも、気持ちを完全に捨てることもできずに今日を生きている。

「それでね、部長が褒めてくれたんだ」

今も、弥生は同僚としてウィリアムの話に耳を傾けている。弥生が「すごい!」と言えば、「すごいでしょ?」とウィリアムは嬉しそうにする。謙遜がないところに、弥生はフッと笑ってしまう。

この幸せな時間が続いてほしい。そう弥生は願った。夜明けまでウィリアムの声を聞きたい。そう思っても、時間は過ぎていく。この世界ほど残酷にできているものはないだろう。

九時半を過ぎた頃、弥生は仕事を終えた。もうあとは帰るだけだ。ウィリアムとの時間も終わる。いや、元から始まってないかと弥生は苦笑した。