しばらくスマホの画面を見ていたウィリアムは、「今日はダメみたいだ」とスマホの電源を切る。

「暗いニュースばっかりだよ」

「例えば、どんなニュースがあったの?」

「中学生の子がいじめで自殺したとか、××県で火事が起きて十人が重軽症を負ったとか、芸能人の離婚話とか、政治家の不倫とかそんなのしかなかった」

「う〜ん……。芸能人のスキャンダルとかは、おばさんたちは好きそうだけどね。私のお母さんもそうだし」

弥生がパソコンを操作しながらそう言うと、ウィリアムはため息を一つつく。ウィリアムのため息を聞くのは初めてで、弥生はパソコンからウィリアムに目を向けた。ウィリアムはコーヒーを飲みながら言う。

「よく歌詞なんかでさ、「明けない夜はない」とか、「明日は光り輝く」とかあるでしょ?明けない夜がないっていうのは正しいけど、この先に待つ明日ってそんなに輝くものなのかな?」

「どうしたの、急に。悩み事?」

いつも明るいウィリアムがそんなことを言うのを聞くのも初めてで、弥生は驚く。ウィリアムは「そんな感じ」と笑った。