僕が生まれるよりも、ずっと昔から続くようにそういつも傷つけあってまた愛し合うのさ。

仕事の合間の息抜きとして、ケータイ小説を読んでいた木村弥生(きむらやよい)は小説を読むのをやめる。もう二十分ほど仕事をサボっている。そろそろ再開しなければならない。

弥生はこのオフィスで働く会社員だ。近々会議があるため、資料作りとして今日は残業している。会議前は残業が多いため大変だ。

「本当は、のんびりケータイ小説を読みたいんだけどな〜……」

弥生以外誰もいないオフィスに、声が響く。仕事を再開したものの、先ほどまで読んでいたケータイ小説の文章が頭から離れない。

切なくて、胸がキュンキュンするお話だった。二人はこれからどうなっていくんだろう。早く仕事を終わらせて読もうと弥生はパソコンの画面と睨めっこする。

もうすぐ三十歳になるというが、弥生には恋人などはいない。合コンに顔を出してもあまりいい人との出会いもなく、恋愛小説に胸をときめかせて生きている。